医療法人社団 輝望会 水野クリニック

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片頭痛

migraine

片頭痛migraine

片頭痛は軽視されることがあります

片頭痛は慢性頭痛の中でも症状が強く、日常生活に大きな支障をきたすことがありますが、軽視されることがあります。

緊張型頭痛

  • 頭部画像検査(CT・MRI)で異常はないです
  • ただの頭痛
  • 市販薬でもなおる
  • 天気やストレスでなる
  • すぐによくなる
  • 仕事をやすまないといけないのか?(我慢よわいという誤解)
  • (医療機関で)鎮痛剤を痛いときだけ、のんでおいてください

片頭痛の患者さんの悩みは大きい

片頭痛の患者さんのお声を聞きますと、我慢をして耐えていることが多いです。片頭痛は命にかかわる頭痛ではありませんが、非常に患者さんを苦しめることがあり、生活の支障が大きいです。

緊張型頭痛

  • 頭痛で動きたくないが、無理して仕事をしないといけない
  • 職場の環境で音が大きいと頭痛がでてきてつらい
  • 頭痛と同時にめまいもひどくなり、通勤ができない
  • 車のライトや日差しで頭痛がつらい
  • 子供の育児が大変で、子供の泣き声で頭痛がつらい
  • 週末の仕事休みに頭痛が集中してしまう
  • 旅行先で頭痛がひどくなりなにもできない
  • 買い物など外出を少しするだけでも頭痛がひどくて、いきたくなくなる
  • 友人と予定をたてにくい(ドタキャンが申し訳ない)
  • 頭痛があることをあたりまえとして生きてきた

片頭痛の症状や特徴

片頭痛は片側だけでなく両側にも生じることがあり、拍動性に限らずしめつけの頭痛を感じる方もいます。
ひどいと寝込むようになり、4時間以上と長く生じます。動くと改善する緊張型頭痛と異なり、頭を動かすと頭痛が増悪します。
頭痛だけでなく、明るい光や大きい音、普段きにならない臭いが不快になります。嘔気・嘔吐を生じることもあり、頭痛以外の症状も苦痛が伴います。
肩こりは緊張型頭痛だけでなく片頭痛でもしばしば認めます。
視野の一部にギザギザとした光や見えない部分が前兆として出現したり、痺れや脱力が出現する方もいます。

緊張型頭痛

日常生活に支障をきたす(中等度以上)
  • ズキンズキンと脈打つような痛み
  • 片側性(両側性のこともあリ)
  • 体を動かすと痛みが増す
  • ひどくなると寝込むほどの痛み
以下の症状を伴う場合がある
  • 光が気になる(光過敏)
  • 音が気になる(音過敏)
  • 臭いが気になる(臭過敏)
  • 悪心、嘔吐
  • 発作の予兆として肩こリ
  • 閃輝暗点、視覚異常などの前兆
痛みの周期・頻度Episodic

同様の頭痛発作が過去に5回以上週2回~月1回程度

持続時間

発作として現れ、4~72時間持続する

月経時片頭痛の特徴(女性ホルモン変動で誘発されます)

月経時に女性ホルモンが変動するため、片頭痛が増悪することが知られています。
月経時の片頭痛は重症度が高く、持続時間が長い、薬剤の効果が乏しいことが知られています。

緊張型頭痛

  • 前兆はないことが多い
  • 重症度が高い
  • 頭痛の持続時間が長い
  • 頭痛薬が効きにくい
  • 一度よくなっても再発しやすい

片頭痛の有病率及び重症度

日本における慢性頭痛では、緊張型頭痛が最も多く、次に多いのが片頭痛であり、有病率は8.4%でした。

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片頭痛の有病率及び重症度

(Sakai, F. et al.: Cephalalgia. 1997; 17(1):15-22.より作成)

日本における片頭痛の有病率は慢性頭痛の8.4%です

片頭痛及び他の神経系疾患の日常生活への疾病負担(海外データ)
GBD(the Global Burden of Disease Study)2016

片頭痛は20代~50代の方に多く、働き盛り、子育て世代に多い疾患です。片頭痛が強いと、仕事の能率・生産性の低下、欠勤の原因になることがあり、経済的損失が高いことが報告されています。

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片頭痛及び他の神経系疾患の日常生活への疾病負担

(GBD 2016 Neurology Collaborators.: Lancet Neurol. 2019; 18(5): 459–480.)

片頭痛は働き盛り、子育て世代に多い頭痛であり、疾病負担が高い疾患です

片頭痛の病態:三叉神経血管説

片頭痛発作発生のメカニズムとして、現在広く受け入れられているのが「三叉神経血管説」です。なんらかの刺激によって、硬膜血管周囲に分布する三叉神経終末からカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)やサブスタンスPなどの神経ペプチドが放出されると、主に硬膜などの血管周辺で血管拡張、血漿蛋白の漏出、肥満細胞の脱顆粒、神経原性炎症が発生します。神経原性炎症は三叉神経を刺激し、神経興奮が中枢へ伝達されると、大脳皮質で疼痛を自覚します。

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片頭痛の病態:三叉神経血管説

(Moskowitz MA.: Ann Neurol 1984; 16: 157-168
清水利彦. 神経内科外来シリーズ 頭痛外来(総編集:荒木信夫),メジカルビュー社,2015,p.119を一部改変
柴田護. 神経内科外来シリーズ 頭痛外来(総編集:荒木信夫),メジカルビュー社,2015,p.2-4)

片頭痛の発生メカニズムとして、「三叉神経血管説」が提唱されている
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が重要な因子です

反復性片頭痛における慢性化の危険因子(海外データ)

片頭痛が強いと、鎮痛剤が必要になりますが、使用回数が多いほどより頭痛の日数が増え、さらに鎮痛剤の使用が必要になるという悪循環になります。鎮痛剤を月に10日以上使用しないことが治療を考える上で重要です。頭痛だから市販薬を使用すればよいということで多用してしまうと、頭痛が非常に強大化してしまいます。
頭痛が生活で困るかたには改善のために医療機関での正確な頭痛診断と治療が重要です。頭痛でお困りであればご気軽に受診をご検討ください。

※表は左右に横スクロールできます。

リスク因子 オッズ比 95%信頼区間 p値
頭痛の頻度5-9日/月 6.2 1.7-26.6 0.005
頭痛の頻度>10日/月 20.1 5.7-71.5 0.001
頭痛治療薬の使用過多 19.4 8.7-43.2 0.001

※月あたり10日を超える急性期頭痛治療薬の使用
(ロジスティック回帰分析)

(Katsarava, Z. et al.: Neurology. 2004; 62(5): 788-790)

鎮痛剤を月に10日以上使用続けると片頭痛が慢性化する危険があります
(片頭痛が片頭痛をより難治性の頭痛にしてしまいます!)

片頭痛治療には、急性期治療と予防療法があります

片頭痛の急性期治療薬として、一般的な鎮痛剤以外に、トリプタン製剤・ジタン製剤があります。これらは医療機関でのみ処方可能であり、セロトニン受容体に作用し、片頭痛による神経炎症や血管拡張を防ぐことで頭痛を軽減させる効果があり、片頭痛の特効薬として使用します。片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3回以上ある場合には、予防薬を検討します。
予防薬には血管を拡張させる薬剤、抗てんかん薬などが有効ですが、片頭痛の病態に重要なCGRPを中和させる注射療法による予防療法が2021年より可能になりました。
予防薬により、頭痛発作の減少、頭痛の強さ軽減や持続時間の短縮、急性期治療薬がよく効くようになる、生活支障が軽減することが期待されます。
片頭痛を慢性化させないためには予防療法が重要になります。

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片頭痛治療には、急性期治療と予防療法があります

片頭痛特効薬であるトリプタン・ジタン製剤は医療機関でのみ処方可能です

片頭痛を慢性化させないために予防療法が重要です

予防療法は片頭痛発作が月に2回以上、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある方に対し検討。

目的
  • 頭痛の回数を減らし、程度を軽くします。
  • 頭痛が起きた時に服用(頓服)するお薬の量を減らします。
  • 頭痛による日常生活への問題を減らします。
方法

予防療法のお薬には、飲み薬と注射剤があります。
効果判定には、2~3ヵ月ほど必要です。

※お薬以外に、生活指導などの対策もあります。
また、頭痛発作が起こった時は、急性期治療薬を服用します。

予防療法のお薬

片頭痛を慢性化させないために予防療法が重要

薬局で購入できる市販の頭痛薬には、予防療法のお薬はありません

予防治療薬(発症抑制薬)に期待される作用(イメージ図)

ピンクのグラフは予防治療薬(発症抑制薬)を使わなかった場合の痛み、青のラインは予防治療薬(発症抑制薬)を使った場合の痛みを示しています。青のラインはピンクのグラフに比べて発作回数の減少や頭痛持続時間の短縮、急性期治療の反応の改善が期待できることから、予防治療薬(発症抑制薬)の使用は生活機能の向上と生活への支障の軽減が期待できます。

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予防治療薬(発症抑制薬)に期待される作用

予防治療薬(発症抑制薬)の使用により、発作頻度や重症度等が軽減し、
生活への支障の軽減が期待されます

片頭痛の対策(治療とセルフケア)

片頭痛の対策では患者さんご自身でもできるセルフケアが重要です。当院では患者さんに記入していただいた頭痛ダイアリーをもとに、患者さんごとに重要なセルフケア対策を個別にアドバイスさせていただいています。

※表は左右に横スクロールできます。

薬による治療 セルフケア
頭痛時の対策

【急性期治療】

  • トリプタン・ジタン製剤
  • NSAIDs※1(アスピリンなど)
  • アセトアミノフィン など
  • 暗い静かな部屋で横になる
  • 痛むところを冷やす
  • 睡眠をとる
  • 珈琲や紅茶を飲む など
予防の対策

【予防療法】

  • 抗CGRP※2抗体薬
  • 抗てんかん薬
  • β遮断薬
  • カルシウム拮抗薬 など
  • 寝すぎ・寝不足を避ける
  • 空腹・脱水を避ける
  • 強い光・大きな音を避ける
  • 急激な温度変化を避ける
  • 頭痛体操
  • 頭痛ダイアリー

※1 NSAIDs(エヌセイズ):非ステロイド系消炎鎮痛薬
※2 CGRP(CGアールピー):カルシトニン遺伝子関連ペプチド

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)抗体療法の作用機序

2021年より片頭痛の予防治療としてCGRPを中和させる抗体療法が可能になりました。
「フレマネズマブ:(商品名)アジョビ®」「ガルカネズマブ:(商品名)エムガルティ®」「エレヌマブ:(商品名)アイモビーク®」の3種類が使用でき、月1回注射をします。(フレマネズマブは3か月に1回も可能)
従来の予防内服だけでは頭痛改善が難しかった方にも、頭痛改善効果が期待されます。

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CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)抗体療法の作用機序

  • フレマネズマブ・ガルガネズマブはCGRPに選択的に結合し、CGRPの活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体製剤
  • エレヌマブはCGRP受容体を選択的に阻害するヒトモノクローナル抗体製剤

CGRP抗体製剤は3種類あり、当院で使用しています

片頭痛日数(1カ月あたり)反復性片頭痛患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験(日韓国際共同 第Ⅱb/Ⅲ相試験)

15~16 フレマネズマブ:(商品名)アジョビ®の片頭痛改善を示した治験データを示します。
フレマネズマブの使用で1か月の片頭痛日数は約4日減少し、効果は注射した1か月目から早期に認め、効果は長期にわたり持続することが示唆されています。

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片頭痛日数(1カ月あたり))

初回投与後12週間での1カ月(28日)あたりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量

(大塚製薬社内資料[反復性片頭痛患者を対象とした日韓二重盲検比較試験], 承認時評価資料
Sakai F. et al.: Headache. 2021; 61(7): 1102-1111., 承認時評価資料 COI:本試験は大塚製薬株式会社による臨床試験である)

フレマネズマブ投与で片頭痛日数は月に約4日減少しました

片頭痛日数の推移(1カ月あたり)片頭痛患者を対象とした長期二重盲検試験:HALO長期(国際共同 第Ⅲ相試験)

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片頭痛日数の推移(1カ月あたり)

各時期での1カ月あたりの片頭痛日数のベースラインからの平均変化量

(大塚製薬社内資料:[片頭痛患者を対象とした長期試験(国際共同長期試験)], 承認時評価資料
Goadsby, PJ. et al.:Neurology. 2020 ; 95(18) : e2487-e2499., 承認時評価資料
COI:本試験はTeva Pharmaceutical Industries Ltd.の治験である)

フレマネズマブ投与で頭痛日数は1か月目から減少し、
12か月にわたり減少します

片頭痛(Migraine)のまとめ

  • 片頭痛は生活支障度が高く、子育て・働き盛り世代の20~40代に多い疾患です
  • 鎮痛剤の使用過多(月10日以上)は頭痛をより難治性にします
  • 正確な診断により、頭痛時の特効薬(トリプタン・ジタン製剤)や予防療法が可能です
  • 片頭痛の神経炎症を惹起する神経物質(CGRP)を治療ターゲットにしたCGRP抗体療法が2021年より可能になり、当院でも治療可能です。(今まで改善ができない難治性の片頭痛にも改善の可能性があります)

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